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『すき。だからすき』 『東京BABYLON』 『X』 『ガンダム00』 等のよろず二次創作倉庫です。

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ユグドラシルの下で

クロウ・リードと侑子さん






その家は静かで、とても居心地が良かった。
私はいつも部屋を散らかしてしまうのだけれど、クロウが元通りに片付けてくれる。
だから、家の中は常に美しく保たれていた。


晴れた朝、目覚めるとすぐに窓を開け、清浄な空気を肺の隅々にまで取り込む。
世界は幾重にも重なり合ってそこに在り、クロウと私は並んでそれを見る。

在るべき物を在る場所へ。
私たちの仕事は真砂の数、満天の星の数だけあった。
在るべき物を在る場所へ。


雨の降る日、クロウがチョコレート菓子を焼き、紅茶を淹れる。
私は紅茶にブランデーを落とす。
彼がそれに対して何か言っても、私は聞こえない振りをする。
そして意地悪く「陰険眼鏡」と呟く。
彼は笑う。
私はあの時、もっと素直になるべきだった。


その家の庭先からは、成層圏が蒼く弧を描いているのが見えた。
クロウはそこで本を読むのが好きだった。
本を読んでいるクロウの隣で、私はいつも暇を持て余してしまう。
しかしその日は、私のスカートの右膝に蝶がとまった。
クロウはじっとしているように言い、それに優しく指を伸ばす。
「捕まえてはだめよ」と言いながら、私は彼に捕らえられたいと望んでいた。
全く愚かしい考えだ。
私たちには為さねばならない仕事がある。






彼は私の名を「ユーコ」などと、いい加減に伸ばしたりはしなかった。
勿論、「ユ・ウ・コ」と一字一字、四角四面に区切るような無粋な呼び方もしない。
彼の優雅な発音のお陰で、私はこの名前を嫌いにならずに済んだ。

――侑子


もう一度、呼んで欲しい。
叶わぬ願いと知りながら、私は彼を懐かしむ。










初出2007.04.21

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