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『すき。だからすき』 『東京BABYLON』 『X』 『ガンダム00』 等のよろず二次創作倉庫です。

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apocalypsis

00
1話以前の捏造(完全に独立した話です)





「先に失礼させてもらう」
 ティエリアの声がして、アレルヤは我に返った。
 コックピットのフロントパネルに目を遣ると、幾つも展開された画面のひとつに、ヴァーチェが演習域を離脱する姿が映っていた。
「……ったく、付き合い悪りぃなぁ」と言うデュナメスのマイスター、ロックオンの声に非難がましい響きはない。
 事実その言葉は 「アレルヤ、おまえも俺や刹那に構わず、先に上がっていいぞ」 と続いた。

 シミュレータで演習を重ねていても、実際に宇宙空間に出てモビルスーツを動かしてみると、修正しなければならない細かな点が少なからず出て来た。
 中でも刹那の乗る近接戦闘機エクシアは、パイロットの精神的不安定さも相まって、他機に比べ調整に手間取っている。その為、年長者でありリーダー的存在のロックオンが、皆の足並みを揃えるべく刹那のフォローにあたっていた。

「出来れば僕も、もう一度……」
 アレルヤはそう口に出してから後悔した。
「何か問題でも?」
 不安に囚われている人間を、ロックオンは見捨てたり出来ない。
「キュリオスは、君達の機体とは違って可変タイプだし」
「相変わらず慎重だねぇ。 まぁ、それがおまえさんの長所でもあるよな」
 信頼と甘えの違いくらい、アレルヤには分かっている。
 これは明らかに甘えだった。

 自分とは反対に演習を切り上げたティエリアは、殲滅目的である重火力兵器搭載のヴァーチェを、何の躊躇いもなく乗りこなす。状況判断は的確で早く、中性的な容姿に反して言動にも容赦がなかった。それには最前線の指揮を任されている戦況予報官、スメラギ・李・ノリエガも一目置いているらしいと聞いている。
「幾ら訓練を積んだって、彼のようにはなれそうにないな……   ハレルヤ、でも大丈夫さ。 僕はやり遂げて見せるよ」
「いま何か言ったか?」
「なんでもないよ」
「あと一回でいいなら、キュリオスのテストを先に終わらせちまおう。  いいな? ……おい、刹那! 聞いてたらおまえも返事くらいしろよ」
「……ああ」
 調子の悪い時の刹那の声はそっけなく、自身に苛立っているのが手に取るように分かる。
「じゃあアレルヤ、さっきと同じ要領でやってみろ。 大気圏突入なんてなぁ技術より度胸だ」

 ロックオンの声が遠くなる。

 自機キュリオスから金色のNG粒子が噴き上がった。
 目が眩むほどに美しいそれは、兵器から放たれる神々しいまでの光り。 




     ハレルヤ これから僕達ソレスタルビーイングは、地上に降りてどれだけの物を破壊するのだろう?

















 帰艦したアレルヤは気持ちを切り替える為にも、シャワーを浴びたいと思った。
 ソレスタルビーイングの母艦プトレマイオスは、4体あるモビルスーツの輸送艦も兼ねており、居住スペースには限りがあった。その為、各コンパートメントにシャワーまでは完備できず、男女が別になった共用物しかない。
 着いてみると、幾つも並んだシャワーブースのひとつが使用中になっていた。ブースは無重力空間に水を飛び散らせないようカプセル形状になっており、湯温の噴出からその強制排出、乾燥に至るまで自動制御になっている。だから誰が利用しているのかは分からないけれど、この半端な時間帯からして先に帰ったティエリア以外には考えられなかった。
 それならば遠慮は要らないだろう。アレルヤが構わずパイロット用のノーマルスーツを脱ごうとしていると、使用ランプが消え、中からティエリアが姿を現した。
 彼はアレルヤを目にすると 「早かったんだな」 と呟き、ふわりと飛んでロッカーの前に下り立った。

 アレルヤが異質な何かを感じ取って振り返った時、ティエリアは既に背を向けていた。
 細身ではあるが、薄く筋肉の乗った直線的なラインは確かに同性のものに見える。それでも拭えない違和感がアレルヤの足を這い上がって来た。
 思い返してみれば随分と長い時間を一緒に過ごしていて、ましてやここへ来てからは文字通り寝食を共にしていると言うのに、彼の裸体を目にするのは初めてだった。
 ティエリアの夜はいつだって誰よりも遅く、朝は早い。


「何を見ているんだ」
 作り物のような白い身体が、ゆっくりとアレルヤの方を向いた。

「君は……」
 声が震える。
 いまやティエリアは、何の躊躇いもなくアレルヤに正面を晒していた。
 拡散するGN粒子のような蒸気だけを纏った彼の身体に、女性らしい柔らかな膨らみはない。しかしそこに、男としての性も見出す事は出来なかった。
 アレルヤは混乱と共に眩暈を覚え、軽い吐き気に襲われた。

「俺がどうしたって?」
 例えようもなく優しい声。
「君は天使の名を持つMSのマイスターなのに、何を恐がっているんだ」
 首を振り、目を瞑る。
「知っているだろう? 天使はね、男でも女でもないんだよ」
 近付いて来た声の主を突き飛ばそうとしたが、それより先に強く腕を掴まれた。
「アレルヤ、大丈夫だよ」
 ティエリアの息が頬に掛かる。
「独りが恐ろしいのなら、俺を抱いてみるかい? もうすぐ再生の為の破壊が始まるよ。 俺達の手で、黙示録のページを開くんだ」




   ハレルヤ   僕はこれから地上に降りて、どれだけの殺戮を繰り広げるのだろう?












2007.10.19

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