初めて宇宙から地球を眺めたのは、家族で行った最後の旅行だった。
リニアトレインの中で俺はシートベルトを外し、何度も宙返りをして見せた。エイミーもライルも大はしゃぎで真似をして、母さんは危ないと怒り、父さんは笑った。
軌道ステーションから見た地球は、光り輝くブルーとグリーンのマーブルに、少しだけブラウンを落としたような模様をしていた。俺はその時、この球体は神様の宝物だと思った。
なぜそう感じたのかといえば、これが大切な物だという証拠に、薄く白い雲に包まれていたからかもしれない。毎夜ベットに入る俺たちに、母さんが毛布を掛けてくれるのと一緒だ。
「私の大切な子供たち」 と、言って。
「何やってんだろうな、俺は」
自分達が生まれ、育ち、暮らしていた星。
多くの人々が笑ったり、泣いたりしながら生き、そういった日々の小さな喜びを積み重ね。
「わかってるさ、こんなことをしても、変えられないかもしれないって。
元には戻らないって。
それでもこれからは、
明日は、ライルの生きる未来を―― 」
そう望むのは、贅沢に過ぎるだろうか?
「よお、お前ら。 満足か? こんな世界で」
いま俺の指先にある地球は、嘗ての美しさを留めたまま、青く輝いて見える。
「俺は、厭だね……」
2008.3.18