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『すき。だからすき』 『東京BABYLON』 『X』 『ガンダム00』 等のよろず二次創作倉庫です。

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ひとりごと

「春宵桜夢の跡」から転載 お題は「独り言」





気持ちがいい。

昴流は春の風を頬に感じながら、ソファでまどろんでいた。
そうしていると、様々なものが頭の中を過っていく。

さっき読んだ、本の中の一節
昨日カフェで耳にした、フレンチポップスの甘いフレーズ
そして煙草の匂いと、星史郎さんの声…

「昴流君、こんなところで居眠りをしていてはいけません」

優しく肩に置かれた上の手の重み

「風邪をひいてしまいますよ」
「いま、僕は… とても気持ちが良いんです」 そう答えると
星史郎の、あきれたような声が落ちて来た。
「なんだ、起きているんじゃないですか」

目を瞑ったまま、声のする方へ手を伸ばす

「キスしてください」
そう言って、触れた頭を抱き寄せる。

「誘ってるんですか?」
「夢を… 見ているんです」



昨日、昴流は根付を拾って帰って来た。
褪せた紐の先に付いていたのは、2cmにも満たない焼き物の眠り猫。
星史郎が見ても、その根付から邪気は感じられなかった。
せいぜい、前の持ち主が大切にしていた物だろう事が、伺われるくらいだ。
ただ、何故だか昴流と波長が合うらしく、今朝からずっとこんな調子だった。
眠いと言っては横になり、星史郎に絡む。
そんな昴流は目に甘い。
しかし、ずっとこのままでは生活が立ち行かないのは確かだ。

星史郎は溜息をついた。
「あんなもの、拾って来るからですよ」
昴流を抱き起し、叩くようにしてその背中を祓う。
「元あった所に、捨ててらっしゃい」
冷たく言われて、昴流の胸がチリリと痛んだ。
「だって、耳が欠けてしまっているんです。 このままでは可哀相で…」
「ですから、いま画材店に行って買って来ました」
昴流の鼻先に付きつけられた小さな袋の中には、瀬戸物修理に使うパテ。
「これで?」
「直すんです」
「僕が?」
「君が拾った猫でしょう」
そう言われては仕方ない。

パテの説明書をよく読んで、慎重に作業を進める。
始めてみれば、ほんの数分で猫の耳は修復出来た。
「お上手ですね」
星史郎の口から、感嘆の声が漏れた。
「でも… 僕よりも星史郎さんがなさった方が、もっと綺麗だったかも…」
「そうですか? 昴流君はやろうと思えば、何だって出来るじゃないですか」
昴流は子供の頃から不器用だと言われ続けて来たので、星史郎の言葉に驚いて顔を上げた。
「本当に、そう思われますか?」
「ええ、昴流君はご自分で考えているより、ずっと器用ですよ。 思い込みはよくありません」
昴流が改めて眠り猫を見ると、その表情が何やら満足そうに感じられるから不思議だ。

「では早速、元の場所に帰して来ます」
誉められたのが余程嬉しかったのか、昴流が元気に立ち上がった。
「そうですね。いま出れば、夕食までには戻れるでしょう」
「はい」



星史郎は昴流を玄関で見送り、呟いた。

「猫の憑いた昴流くんも、なかなか魅力的でしたね。
 祓うのは、もう少し楽しんでみてからでも良かったでしょうか?」









  最近、猫化した昴流くんや星史郎さんを見掛けるので、私も流行にのってみましたv
  でも何故か‘猫化’ではなくて、ただの‘猫憑き’昴流くんに… (笑) 
  据え膳に手を付けなかった星史郎さんに拍手!?







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